2016年10月07日

確定拠出年金の誤ったアドバイスに気を付けよう その1

みなさま、こんにちは。
FPスキル活用勉強会運営スタッフ(公式サイト管理人)の佐藤です。

2017年1月から確定拠出年金の制度改正もあり、確定拠出年金に一層の注目が集まっています。そのような背景から、確定拠出年金に関する雑誌記事、ネット記事も多くみられるようになりました。

その一方で、記述に誤りのある不適切な記事も見受けられるようになりました。
皆様が確定拠出年金のアドバイスをする際には、ぜひ適切な情報提供に努めていただきたいと思います。

今回から2回にわたり、確定拠出年金に関する記事を題材にして、確定拠出年金のアドバイスで大切なポイントを見ていくことにしましょう。

 
まず、下記の記事をお読みください。
以下では、この記事をすべて読んだという前提で、この記事対する補足をしていきます。

【リスクゼロで年率30%運用も 個人型DCは利用しないと損】
http://manetatsu.com/2016/09/73791/

 

タイトルから、投資詐欺かのような怪しさが漂っていますね(笑)
メディアという性質上、閲覧数を高める必要があるため、このようなタイトル付けになっているのだと思いますが・・・

まず、この記事中における、節税効果の記述について指摘します。
上記記事中に、次のような一文があります。(一部、中略しています)


税制上、個人型DCの掛金は小規模企業共済等掛金控除に当たり、全額が所得控除の対象となる。
会社員が個人型DCに加入する場合は、最大で月額2万3,000円を掛け金として積み立てられるため、年収が500〜600万円であれば、所得税は5万5,200円(2万3,000円×12か月×所得税率20%)、住民税も2万7,600円(2万3,000円×12か月×住民税率10%)減少し、合計8万2,800円の節税効果を得られる。



さて、ここで述べられている節税効果ですが、実際より過大に見積もられています。
現実以上に得であるかのように読者を錯覚させている点が、問題です。
みなさんは、この誤りを見破れましたでしょうか?

 
年収が500万円に限らず600万円の会社員の方も、実際の所得税率は10%が適用されます。20%ではありません。

では実際に、年収600万円の人のケースで、所得税額の差を見てみましょう。FP試験の3級でもあった計算をしていきますが、お付き合いくださいね。

 
年収600万円の人が、確定拠出年金をしなかった場合、「所得の額」は次の通りです。

収入600万円−給与所得控除174万円−社会保険料控除90万円−基礎控除38万円=298万円
※社会保険料控除は、年収の15%と見積もっています。実際、健康保険料と厚生年金保険料だけで約14%あり、これに雇用保険料と、40歳以上の方は介護保険料の支払いもあるので、社会保険料控除の額は14%を超えます。

これ以外に所得控除はないものとすれば、この298万円という所得に、所得税がかかります。その所得税額は、次の通りです。

298万×10%−9万7500=20万0500円
※所得が330万円以下の方は、税率10%です。

年収600万円の会社員は、税率は10%になりますね。
FP3級の勉強をした人であれば、ここまでのことはわかると思います。

 
さて、この人がさらに記事のとおり、月額23000円の確定拠出年金をした場合の所得税額を計算してみましょう。

確定拠出年金による小規模企業共済等掛金控除の額は、 2万3,000円×12か月=27万6000円 です。
したがって、所得の額は次の通りです。

収入600万円−給与所得控除174万円−社会保険料控除90万円−基礎控除38万円−小規模企業共済等掛金控除27万6000円=270万4000円

これをもとに所得税額を計算してみると、次の通りです。
270万4000×10%−9万7500=17万2900円

 
以上の結果から、
・確定拠出年金をする前の所得税額:20万0500円
・確定拠出年金をした後の所得税額:17万2900円
となりますので、節税できた金額は、この所得税の差を求めて、
20万0500円−17万2900円=2万7600円
となります。

この説税額は、「2万3,000円×12か月×所得税率10%=2万7600円」と一致します。
しかし記事中では、「2万3,000円×12か月×所得税率20%=5万5200円」と、実際の2倍もの節税があると説明しており、誤りといえます。

おそらく著者は、所得の金額と収入金額との違いを正しく理解できていなかったものと思います。
(所得が500万〜600万円であれば、確かに税率は20%となります)

 
住民税の節税額は記事のとおりですが、このように節税額を誤って書いているFPの記事は、結構見受けられるものです。
真面目に税額を計算すれば、このような誤りをすることはありません。
FPの資格を取る過程で、せっかく計算式を体得したのですから、記事を書く方はそれをぜひ活用していただいたうえで、わかりやすく正しい情報提供に努めていただきたいと思います。

 
皆様が確定拠出年金での節税についてアドバイスをするとき、このような詳細な計算式を提示しづらい場合もあるでしょう。相手に計算式の知識があればよいですが、そうでなければ、わかりやすく言い換えた説明のほうが効果的です。

例えば、上記でお伝えしたような計算を自分でやってみて、
・年収400万円の人なら、最終的な所得税率はおよそ●%
・年収800万円の人なら、最終的な所得税率はおよそ●%
・他に所得控除があれば、最終的な所得税率はさらに下がる場合もある
というような情報を持っておくのも、一つの方法ですね。

ただし、相手から具体的に情報を聞き出して税額を計算するのは、本来は税理士の免許が必要な業務となりますので、この点はご注意ください。

長くなりましたが、本日は確定拠出年金の節税アドバイスについてのポイントをお伝えしました。
次回も、確定拠出年金の内容をお届けしますので、お楽しみに。

 

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posted by FPスキル実践活用勉強会スタッフ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 年金・社会保険